レボログ流NBAプレイヤー列伝『スティーブ・ナッシュ』編

プレイヤー名鑑

今回から、不定期ではあるが、独断と偏見でお送りするNBAプレイヤー列伝と題して、過去から現在にかけて、有名無名を問わず、筆者が好きなNBAプレイヤーについて書いてみたいと思う。

 

第一回目を飾るのは、我が永遠のアイドルスティーブ・ナッシュ

 

彼の現役時代のプレイをご存じないという方は、こちら有志の方がまとめてくださった素晴らしいキャリアミックスを一度ご覧あれ。

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ポイントガードとしてリーグ史上2人目となる2年連続MVP

 

www.theatlantic.com

 

時系列はやや前後するが、やはりナッシュの黄金期は、なんといっても2003-2004シーズンに古巣フィニックスサンズに移籍してからだと思う。

彼のパスを起点に展開されるラン&ガンオフェンスは、今も鮮やかに私の記憶の中に刻まれている。

サンズの快進撃の立役者として活躍したナッシュは、ポイントガードとしては、マジック・ジョンソンに次ぐNBA史上二人目の2年連続シーズンMVPという快挙を成し遂げた。これは、シューティングガードを含めても、過去に達成したのは当時マイケルジョーダンとマジックだけ(つまり史上3人目)という、まさに偉業である。

 

移籍直後は、当時サンズの田臥選手の良きメンターでもあった。

 

マイケルジョーダンのような神がかった身体能力が備わっているわけでもなく、

マジックのようなサイズがあるわけでもなく、

 

公称では191センチと発表されてはいるが、実際には186センチ程の身長と噂される白人のプレイヤーが成し遂げたという意味では、NBA史上類をみない快挙と言えるだろう。

 

卓越したシュート技術、広いコートビジョン、そして優れたパス技術は、海外の選手と比べると決して身長の高くない日本人プレイヤーにも参考になる部分が多いと感じる。

 

ナッシュ家は生粋のサッカーファミリー

もともと、カナダ出身のスティーブナッシュだが、意外にも、彼の家族はサッカーと関わりのある人物たちばかりだ。

父のジョン・ナッシュはイングランド出身の元プロサッカー選手、弟のマーティン・ナッシュはサッカーカナダ代表をつとめ、妹のジョアンも学生時代にサッカー選手として活躍している。

 

スティーブナッシュ自身も、父からの強い影響を受けてか、幼いころからサッカーに親しみ、一時はプロの道に進もうか真剣に悩んだほどだったという。

 

将来は、映画製作にも興味をうかがわせるナッシュだが、その彼自身が監修をつとめたTraining dayという映像作品では、幼いころ自身がサッカーに親しむ貴重な映像のほか、トレーニングの一環か、テニスをプレイする様子なども収められている。

 

もし、彼が、仮にテニスに本気で打ち込んでいたら、4大大会常連のようなプロテニスプレイヤーになっていたのかもしれない。

 

そんなifに思いを巡らせながら見てみるのも一興だろう。

余談だが、彼はスケボーもお手のものだ(笑

 

最終的には、NBAでプレイする道を選択したが、オフシーズンには、彼自身もファンだというプレミアリーグ、トッテナムの練習にも参加し、その華麗な足技を披露して周囲を驚かせるなど、少年時代から培ってきたそのスキルは今なお健在である。

 

オールスターダンクコンテストで見せた鮮やかなヒールリフトパスや、練習合間に遊びで見せるリフティングなどを見ても、彼のサッカーへの愛情とスキルの高さが伝わってくるというものだ。

 

それゆえ、テニス以上に、

もし、仮にサッカーの道に進んでいたらどうなったのだろうという興味は尽きないが、

2年連続でシーズンMVPを獲得するなどの快挙を考えると、やはりバスケットボールが彼にとってベストなスポーツだったのではないかと思える。

もちろん、個人的には、彼がバスケットボールプレイヤーでいてくれたことほど、嬉しいことはなかった。

 

持病を抱えながらプレイした現役時代

ナッシュの現役時代をご存知の方なら、彼が試合中、コートサイドで横になっている様子を目にしたことはないだろうか。

 

 

実は、彼は背中に痛みを伴う脊椎分離すべり症という持病を抱えており、試合中は少しでもその痛みを和らげるためあのような形で休息をとっていたのだそうだ。

 

 

確か、先日引退を発表した陸上・男子100メートルのウサイン・ボルト選手も、生まれつき股関節が歪んでいるというハンディを抱えていたという話を聞いたことがあるが、そのようなハンディを跳ねのけてトップアスリートとして走り続けるための徹底した鍛錬と自己管理にはホント頭の下がる思いだ。

 

リーグ史上最高のポイントガードもついにリングには手が届かず

 

マブス、サンズと何度となくプレイオフに進出し、チャンピオンリング獲得を目指したナッシュだったが、レイカーズ、スパーズというライバルチームを前に、現役時代、ついにその夢は果たされることはなかった。

 

特に、印象に残っているのは、スタウドマイヤーらが復帰し、サンズにとってファイナル制覇最大のチャンスと言われた2006-07シーズンのカンファレンスファイナルでの対スパーズ戦。

その年、リーグ最高勝率だった盟友のノビツキー率いるマブスが、まさかのプレイオフ1回戦というアクシデントに見舞われる中、レギュラーシーズンでリーグ2の勝率を誇ったサンズにお鉢が回ってきた形だが、

 

その初戦、ナッシュはいきなりトラブルに見舞われる。

試合中盤、マッチアップしていたスパーズの司令塔トニーパーカーと接触し、鼻から出血。

すぐに止血に向かうも、なかなか血はとまらず、その後、その試合では最後までコートに立つことはなかった。

ナッシュ不在の影響は大きく、大事な試合終盤でチームの中心を欠いたサンズは、第一戦を落とす結果に。

 

続く第2戦では、チームのもう一人の中心プレイヤーであるアマレ・スタウドマイヤーが、激しいディフェンスをすることでも有名なスパーズのボウエンのプレイに対し、

「スパーズはダーティー(汚い)なチーム。」

と発言するなど、シリーズ全体に、大荒れ模様の不穏な空気が流れ始める。

 

そして、極めつけだったのが、

第4戦にスパーズのチャンピオンリングコレクター男ロバート・オーリーが見せた

もやは故意としか思えないナッシュめがけた力任せのタックル事件である。

 

いつもは、穏やかなナッシュが、思わずオーリーに詰め寄るシーンをみて、

 

「てめ、この野郎!ふざけんな!!」

と私も、思わず手がワナワナと震えるほど、怒りが込み上げてきたのを覚えている。

 

その瞬間、チームメイトのスタウドマイヤーーとボリス・ディアウがベンチから立ち上がり、これが乱闘を助長したとして、次の第5戦ともに出場停止に。

 

uproxx.com

 

その後、主力を欠いたサンズは、第5戦にも敗れ、続く第6戦でも連敗して、結局そのシリーズは敗退することとなってしまった。当時は、大のサンズファンとして期待していただけに、あのような後味の悪い幕引きとなってしまったことをとても残念に感じたのを覚えている。

 

あの後しばらく

オーリーのことをマジで嫌いになりかけたが(笑、

あれもまた真剣勝負ゆえのアクシデントなのだと、今となっては、そう自分に言い聞かせている。

 

やはり、私の中では、アマレ、マリオン、ディオウらがいた頃のサンズこそ、一番輝いて見えたし、毎回、試合を見るたびにワクワクすることができた。あ、もちろん、マイク・ダントーニもね笑

 

もし、あのままジョージョンソンがチームに残っていたら、などとおもわなくはないが、スポーツにifは言いっこなし…だよな、などと自分を戒めつつ。これは、ファン同士、酒場ででも盛り上がればいい話なのだろう。

 

歴代最高のPG、最後は静かな幕引き。

 

その後、レイカーズなどでプレイし、キャリアの晩年は、背中のケガなどで満足にプレイできず、2015年3月21日、ついに引退を表明。

個人的には、いつかいつか!と思いながら、

とうとう彼のプレイをコートで生で見る機会を得られなかったことが残念でならない。

 

もちろん、マジックジョンソンや、ジョンストックトン、ゲーリーペイトン、ジェイソンキットなど、他にもすばらしいPGはたくさんいる。

 

ただ、あの体であれだけのことを成し遂げ、倒されても何度も立ち上がり、最も多くの感動と勇気を与えてくれたという意味で、やはりナッシュこそ私にとって、ベストポイントガードなのだ。

 

なお、引退を表明後は、ウォリアーズの選手育成コンサルタントに就任。また非常勤のコーチとして、後輩であるカリーらの指導に当たっている。

 

そして、ついに念願のとき

そして、就任二年目となった2016-17シーズン、ついに、選手時代には果たすことのできなかった優勝を経験し、悲願のリングを手に入れることとなった。

 

はからずも、ナッシュがウォリアーズに籍を置いたその年、

サイズやポジション、そして3ポイントシュートを得意とするプレイスタイルなど、何かと共通点が取りざたされるカリーが、PGとしてナッシュに次いでリーグ史上11人目の2年連続シーズンMVPを獲得したのも、何か只ならぬ運命を感じる。

 

                                                 www.huffingtonpost.com

 

個人的な希望としては、今後、ぜひNBAのヘッドコーチとして手腕を振るうナッシュの雄姿もコートで一度は拝みたいものであるが‥‥ただ、キッドの例もあるしなあ…、やっぱり映画監督としての彼の作品を拝みたいところである…ということにしておこうかな、ナッシュの場合、年齢を重ねても、クリント・イーストウッドみたいなカッコいいおじいちゃんになりそうな気がするんだよね(笑

 

というわけで、今回はこのへんで。