たまにテレビのロケ番組などを見ていると、芸人やタレントが、街ゆく中年の男性・女性に対し、
お父さん
もしくは
お母さん
という呼び方をしていることがある。
おそらく、テレビ業界では、いろいろ検討した結果、見知らぬ中年の方を名前以外で呼ぶ場合には、これが一番角が立たない、もしくは無難だということで、出演者一同に対してもお触れが出ているのかもしれない。
もちろん、いきなり
おじさん、おばさん呼ばわりするのはすこぶる無礼なこと
というのは理解できる。
ただ、じゃあ、お父さんならオールOKかというと、
まあ、ちょっと疑問がありますよね~という話。
別に、僕、君のお父さんちゃうねんけど…
以前、関西のバラエティ番組で、
待ちゆく男性が、その方を
「お父さん」
と呼んだ芸人に対し、こう切り返して、一瞬、場が凍ったことがあった。
ただ、この男性の言い分は至極まっとうで、
何も間違ったことは言っていない。
見ず知らずの他人にいきなりお父さん呼ばわりされ、素朴に思ったことを口にしただけではないだろうか。
あるいは、前々から、このような呼称に違和感を持っていて、もし街頭インタビューでお父さんと呼ばれようもんなら、一度モノ申してやろう!と思っていたツワモノだったのかも…。
なんてことを、番組を観終わった直後、しばし考えたりしたものだ。
統計的にも”お父さん”はもはやテンプレとは言えない
かつて(まあ、今もだけど)、”お父さん””お母さん”という呼称が重宝された背景には、
中年に差し掛かった男女なら大抵結婚して、子供もいるものだよね
という暗黙の了解があったのだと思う。
だから、”お父さん”や”お母さん”という呼び方も、
多少の違和感はあれど、大らかに受け止められているという側面もあったのだろう。
しかし、現代では、50歳男性の5人に1人は生涯一度も結婚していないと言われ、統計的に見ても、中年男性に5回インタビューしたら、そのうち一回は、誰のお父さんでもない人に対してお父さん呼ばわりしてることになる可能性が非常に高い。
結婚してない俺って、やっぱ変なのかな?
そう感じながら、それでも、場の空気を読んでニコニコしていなければならない中年男性(女性)の悲哀を、番組を制作する方々はお感じにならないのだろうか?
ロケでインタビューを受けた経験のある男性の中からは、
「自分は結婚していないので、お父さんと呼ばれ続けている間、なんだか終始、身分詐称しているようで後ろめたかった。」
という意見まで出るほどだ。
もし、今後もテレビが大衆の娯楽であり続けたいのなら、こういうマイノリティーの抱える微妙な不快感や違和感みたいなものにもっともっと敏感になっていかなければならないと思う。
そして、
どうせ見当はずれな呼び方をするのなら、
大将!だとか大統領!とか大横綱(これは、今あんまりか?)とか大女優!とか
誰が言われても悪い気はしないような呼び方をすればいいのに、と思うのは、私だけだろか?
それでは、また。
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