「おりゃおりゃ~うりゃ!」
「ひゃっほ~い!」
気が付くと、どこかで聞き覚えのあるそんな嬌声が聞こえてきた。
見ると、身の丈180センチを超える恰幅のいい男が、私の目の前で、近未来を思わせるような奇抜なデザインのレーザーライフルを使って、
迫りくる怪物…怪物!?
ともかく、現実世界では、まずお目にかかれないようなグロテスクな怪物たちを次々と撃ち倒している。
よく見ると、その男は、伊集院光氏だった。
しかし、怪物の方はというと、皆一様にドット絵のような荒いグラフィックで描かれており、実写版(?)伊集院(以下、敬称略)とドット絵の怪物が交戦する(というか伊集院が一方的に怪物を嬲り殺すほぼ伊集院無双状態)奇妙な光景が目の前に映し出されている。
いや、正確には、私もそこにいるわけだから、映し出されているというのはおかしく、
目の当たりにしていたというべきか。
ともかく、頭のねじが一本どこかへぶっ飛んでしまったかのようなクレイジーなはしゃぎ方をする伊集院。
そんな姿、プライベートでも見たことがない(もちろん、彼のプライベートなんて知る由もないのだけれど、なぜか、そのときは、『ああ、こんな姿初めて見たなあ~』というような、まるで旧知の中であったかのような感想を抱いたという記憶がある』)。
もう何体、撃ち倒したであろうか。
既に顔中血まみれで、なおも嬉々として銃を乱射しまくる伊集院。
しかし、ソイツは、確実に後ろから迫ってきていたのだ。
突如として現れた強大な敵。
そいつは伊集院氏に向かってある攻撃をしかけた。
それは、ズバリ”ガソリンをぶちまける”といういわば奇襲攻撃。
なぜガソリン?と思うかもしれない。
しかし、敵もバカではなかった。
というのも、数分前から伊集院は、攻撃方法を銃から、火炎放射器を中心とした火器に切り替えており、その敵は、そのことを見知って、伊集院の自爆を狙ったのだ。
ヒャッハー伊集院も、上がりきったテンションの中、彼一流の冷静さを取り戻し、そのことに気が付いたようだが時すでに遅し。
Tシャツにしみ込んだガソリンに、彼の放った炎の一部であろう火の粉が引火し、火だるまに…はならなかった。
どうやら、敵の放ったガソリンは、伊集院の服の一部にしか触れておらず、結果的に彼の着ていたTシャツの裾を燃やすにとどまった。
それでも、放置すれば大やけどを負う急を要する事態である。
と、ここで急に場面が転換し、我々は、マンション、いやビルの窓に面するヘリのような所に立っていた。
吹き付けるビル風は、遮るもののない我々に容赦なく吹き付ける。
かくいう伊集院氏も、突き出た腹でバランスがとりにくいのか、落ちまいと必死にバランスを取っている。
強風で先ほど服に燃え広がっていた炎は勢いを増していた。
すると、その様子に気づいたのか、その建物に住む住民と思しき女性が、窓から顔を出した。
「あれ!?伊集院さん!?なんか燃えてますけど、大丈夫ですか??」
そう言いながら、ファンなんです~握手してくださいと手を差し出す女性。
(いやいや、大分緊迫したこの状況でよ、もっと他にさ・・・あるだろ?)
ただ、私もそれを口にする余裕はない。
元来高所恐怖症であることに加えて、この強風だ。
伊集院の様子を横目でうかがいながらも自分のバランスを保つので精一杯なのである。
「え?うそ!ぎゃあああー」
ん?
次の瞬間、なぜか、先ほどの女性が窓から地面へと真っ逆さまに転落していった。
どうやら、先ほど「ファンなんです~」と差し出した手を伊集院に取られ、伊集院が自重を支えようと体重をかけた瞬間、バランスを崩して、そのまま窓の外に引きずり出されたらしかった。
かくいう伊集院も、未だにバランスを安定させることができずに、たえず手を動かしながら、前後に体を揺らしていた。
そして、次の瞬間、下から浮上してきたのか、先ほどの巨大な怪獣に、背中をツンとこづかれると、これまた
「ギャ~~~」
という叫び声を残し
私の目の前から姿を消した。
(なんだよ、なんなんだよコレ…)
もう、ただただ茫然自失…恐ろしくて下を見ることなんてできない。
唯一の救いは、強い風のせいで周囲の音がすべてシャットアウトされていたことくらいか。
(いよいよ、次は私の番か・・・)
そう覚悟を決める。
いろいろあったけど、ドット絵の怪獣にやられて終わるのか、オチとしては笑えないけど、まあ、あきらめが肝心かねえ・・・。
しかし、怪獣は、しばし私をじっと観察した後、興味なさげにフワフワと、どこかへ飛んで行ってしまった。
(あれ?助かった?)
と思ったら、急激な眠気が…
ハッ!
…生きてる!
気が付くと、そこは見慣れた自室のベットの上だった。
(な~んだ、結局、夢オチかよ…)
まあ、普通そうだろ(笑
とツッコミを入れたくなるが、極度の高所恐怖症も相まって、目覚めてしばらくしても、ドキドキが止まらない。
それに、夢とはいえ、無残に命を奪ってしまった伊集院氏にも、何だか申し訳ない。あと、名前は出てこないけど、ファンの女性も。
というわけで、何となく罪滅ぼしのつもりで、ただいま伊集院光のラジオを聴いております…というのもオチとしてはイマイチですが…こればっかりは((-_-;)
それでは、また。