「それにしても、近頃は本当に、みんな遠くからシュートを打つようになったよなあ…。」
つい先ほどまで、こんな動画を見ながら、ぼんやりとそのようなことを考えていた。
80年代のバスケットボールのことはあまり詳しくないけれど、90年代、2000年代のバスケットボールと比べても、ここ数年(というか、カリー覚醒後)でバスケットボールというゲームのスタイルは、インサイドからアウトサイドへとシフトしてきたように見える。
特にその流れを象徴するのがウォリアーズで、そのまた中心にいるのがカリーという選手だ。

Mar 3, 2016; Oakland, CA, USA; Golden State Warriors guard Stephen Curry (30) points to the fans after the win against the Oklahoma City Thunder at Oracle Arena. The Golden State Warriors defeated the Oklahoma City Thunder 121-106. Mandatory Credit: Kelley L Cox-USA TODAY Sports
まあ、実際、4ポイントラインがどうのとか言われだしたのって、彼の影響によるところが大きいんだろうしね。
NBAは4ポイントラインの導入を否定しているけれど…
リーグスポークスマンのティム・フランク氏は同日、「NBA、そして競技委員会でも、4Pラインの導入とコート拡張についての真剣な議論は行なっていません」と明言したという…といっても、これは2014年の2月の記事なので、それから4年たった今、果たして議論はもりあがっているのか?というのは興味深いところではある。ただ、今のところ特に音沙汰なし。
バスケットボールにも押し寄せる効率化の流れ
最近のバスケットボールを見ていて思うのは、
「なんか、省エネって感じだなあ…」というか、やっぱりひとことで言えば”効率化”してんな!ってこと。
スマホやタブレットPCなど、デバイスの小型化・高性能化により、試合中でもリアルタイムで選手の詳細なデータを元に戦略をたてられるようになり、よりコスパのいい戦い方ができるようにもなったし、また求められるようにもなったということはあるだろう。
「NBA はデータが支配するリーグです。STATS 社との提携を拡大したことで、チームやファンは画期的な統計データにアクセスできるようになりました」
というのは、NBA 運営およびテクノロジー担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのスティーブ・ヘルムート氏がNBA.comのインタビューに答えた際の発言だというが、今やコーチや選手だけではなく、ファンまでもが、ポップコーンとコーラではなく、スマホ片手に試合中瞬時にフィードバックされるチームや選手の統計情報をトラッキングしながら観戦する時代になったのだろうか…いやはや。
話は、前後して、
テーマは再びカリーとロングスリーのことについて
もし、別段インサイドでのせめぎ合いで消耗しなくても、ダブルスクリーンを使ってシューターをフリーにしなくても、バックコートからフロントコートへと、ハーフラインをまたいですぐにシュートを打って決めてしまえれば、チームもいかにそのようなシュートを多く決めるかということに躍起になる可能性は高い。
ファンがそのような距離のあるシュートを望めば、リーグだって無視できず、やがてはその流れを汲んで4ポイント導入に踏み込む可能性が高いと、個人的には思っている。
だって、導入して失敗するイメージが無いもの(笑
強いて言うなら、ゲームがやや大味になるかも?くらい。
それでも、ディフェンスが外に引っ張られることでインサイドにドライブしやすくなるだったり、派手なダンㇰを狙うお膳立てもしやすくなるだろうし、ゲーム全体を通してみても、
得点を取り合う、攻守の切り替えの早いよりスピーディーなバスケットに変わっていく可能性も高い。
さらに、身長のスポーツとはいえ、優れたシューターがいれば勝てる!というゲームになれば、ワンチャン日本など、身長やフィジカルで劣る国のプレイヤーたちも、正確なアウトサイドシュート力を武器に、続々とNBAに参戦していくことだって夢じゃない。
「僕はね、世界一のシューターが日本人だって全然不思議なことじゃないと思ってるよ。」
名前は忘れてしまったが(失礼)、かつてクリニックで来日した際、あるハンサムなNBAヘッドコーチが高校生たちに向けて贈り、印象的だったこのメッセージ。
いつか日本人のプレイヤーの中から、NBAでも1,2を争うようなシューターが現れて、
「ああ、あのコーチはきっと予言者だったんだな~ありがたや、ありがたや。」
みたいに、しみじみと振り返ることができる日が来ることを、ファンとしては心待ちにしたいところだ。
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シューターがスポット浴びる流れは悪くないけれど…
かつては、インサイドを制する者が試合を制すといわれセンターがゲームを支配し、その後、マイケルジョーダンに象徴されるような、得点力のあるオールラウンドなガードプレイヤーがリーグを支配する時代が続き、
そして今、規格外のシュートレンジと、ドリブルスキルを併せ持つカリーのような新時代のシューターがリーグを席巻している。
たしかに、クイックリリースからディフェンスの一瞬のスキをついて決めるディープスリーは見ていて気持ちがいいし、全く悪いものではない。むしろ素晴らしい。
シャックや、レブロンみたいな風にはなれなくても、ワンチャン、カリーみたいになら…
そんな風に、日本の子供たちにも希望が持てるプレイスタイルといっていいだろう。
仮に4ポイントが導入されたというテイで不満をぶちまけてみると…
ついに先日、NBAで4ポイントラインが導入された※。
※あくまで妄想です(笑。
しかし、である。
一ファンとしては、それでいいのか?と疑問に感じてしまう面もある。

Vince Carter of the United States team (9) dunks over France’s Frederic Weis as teammate Kevin Garnett (10) watches in the second half of their men’s basketball preliminary game September 25, 2000 at the Olympics in Sydney. The United States beat France, 106-94. Carter happens to be wearing Nike Shox gym shoes. Handout photo from Nike. — DATE TAKEN: recd 2000 No Byline Nike HO – handout ORG XMIT: PX33021
例えば、マイケルジョーダンのダブルクラッチやトリプルアクセル、そして、ビンスカーターの7フッター越えダンク、ジャンルは違えど、元AND1に在籍した”プロフェッサー”ことグレイソン・バウチャーの神がかったドリブル。
ダブルクラッチやダンクは、当然決めても2点だし、ドリブルに関しては、いくら度肝を抜くようなスキルを披露したところで1点にもならない。
しかし、だ。
ファンが、長年語り継ぐのは、MJの”エアー”と呼ばれた滞空時間の長い空中での妙技であり、ヴィンスカーターの度肝を抜くダンクであり、プロフェッサーのアンクルブレイカーなのだ。
であるならば、それら観客を熱狂させるプレイを披露したプレイヤーにも、試合の中で何か報いる方法があってもいいのではないか?
ということで、いくつかアイディアを考えてみた…って唐突だな、おい💦
というか、不満をぶちまけるという流れはどうした(笑
アイディア1.得点パターンの多様化
おことわり)ここからは、酔っ払いが熱弁を振るいますので、どうぞ大らかな気持ちでいられる自信のある方だけ、お気をつけて先にお進み下さい。
それでは、いってらっしゃいませ。
現在のバスケットボールのルールでは、基本的に得点はどれだけ遠くからシュートを決めるかによって、その多寡が決まる仕組みになっている。
カリーらの登場で明らかに加速し始めた超長距離砲ブーム。
ファンを熱狂させることをいちばんに考えれば、
ひとつの試みとして、スリーポイントラインの外側に4ポイントラインを設置するルール改正が行われたこと※は、何ら不思議ではない。
※あくまで、妄想です。
現に、かつて2ポイントラインしかなかったバスケットボールという競技に3ポイントラインが導入されたという例もあり、今回はまた一つ時代が一歩先に進んだというだけのことだ。
良し悪しはともかく、進化というものは基本、とめられない。
スリーポイントラインのその遥か外側からシュートを決める選手が珍しくなくなった現在、4ポイントライン導入を阻む障害は取り除かれたという事なのだろう。
ただ、それにより、ゲームがアウトサイドシュート合戦の様相を呈し、インサイドでの迫力のあるせめぎ合い、体と体のぶつかり合いが減ってしまうとしたら、何とも寂しい気がする。
そこで、例えば、通常のリングより50センチ~1メートルほど高い地点にもう一つリングを設置し、そこにダンクを叩き込んだ場合には、3点(いや4点でもいいかもしれない)というルールを追加してみるのはどうだろう。
この際のポイントは、ダンク以外の得点は認められないということである。
つまり、4ポイントラインというアイディアが、より長距離からの得点に報いるルールなら、
3ポイントダンクは、より高く飛ぶことのできるプレイヤー、そして果敢にダンクを狙いにくプレイヤーに報いるためのルールなのである。
このルールを採用することにより、身体能力の高いプレイヤーたちにとっては、果敢にインサイドに攻め込むインセンティブが生まれる。
ただ、どの程度の高さであれば、4点に値するか、みたいなことはおおいに議論の余地がある部分だと思う。
アイディアその2:部分的に芸術点のようなものを導入する
これはつまり、観客をあっと言わせるような美しいドリブルを披露したプレイヤーに報いるためのシステムである。
例えば、フィギアスケートなどでは、技術点のほかに芸術点という、審判の主観によって点数が左右される項目がある。
それに倣い、バスケットボールでも、審美眼に長けたレジェンドプレイヤーたちによる芸術点の概念を試合に導入してはどうか。
もし実現すれば、
イメージ的にはオールスターウィークエンドで行われるダンクコンテストのジャッチシステムに近いものになるだろう。

LAS VEGAS – FEBRUARY 17: (L-R) Judges Michael Jordan, Julius Erving and Dominique Wilkins hold up the scores for the winning dunk by Gerald Green of the Boston Celtics in the Sprite Slam Dunk Competition during NBA All-Star Weekend on February 17, 2007 at Thomas & Mack Center in Las Vegas, Nevada. NOTE TO USER: User expressly acknowledges and agrees that, by downloading and or using this photograph, user is consenting to the term and conditions of the Getty Images License Agreement. (Photo by Jed Jacobsohn/Getty Images)
また、芸術点は、ドリブルだけでなく、ダンクシュートやレイアップなどに導入してもいい。
いやいや、何も芸術点である必要はない。
単純に、このドリブルムーブから得点を決めたら+1点
720(2回転)ダンクなら+2点など、技術点としての加点項目を加えるのもアリだと思う。
その方が、より公平な判断ができるし、ファンにとってもわかりやすいだろう。
問題は、ファンにとってゲームが分かりにくくなること
先ほど例に出したフィギアスケートの場合、
それほど競技に詳しくないファンにとって、どのジャンプが何点であるか、といった知識や、そもそも今、選手が飛んだジャンプがトリプルルッツなのかトーループなのかという違いを瞬時に判断することは困難である。
そのため、解説の方が、ジャンプのたびに「ダブルトーループ、トリプルルッツ」などと逐一説明を加えている。
その点、バスケットボールは、戦術的な理解度はさておき、基本的には、ゴールにボールが入れば2点(もしくは3点)という非常にわかりやすいゲーム性が魅力のスポーツだ。
もし、仮に私がアイディアとして挙げたような要素がゲームの中に組み込まれれば、派手なプレイが増える半面、加点要素が多すぎてわかりにくいということも起こってくるかもしれない。
ただ、そうならないための方策は割と単純で、
加点要素を分かりやすいものだけに絞ってしまえばいい。
例えば、クロスオーバーで相手を転ばせたら(アンクルブレイク)1点、フリースローラインからダンクを決めれば+1点、トリプルアクセルなら+1点といった具合だ。
そうすることで、分かりやすさと派手さの両方を担保することができるようになると思う。
この辺は、ゲームであればNBA2kシリーズのハウスルール※のようなイメージで捉えていただければと思う。
特別な存在がやがてルールすらも変えていく
最後は、妄想から解き放たれた状態で(笑、
私なりの感想を交えつつ終わりにしたい。
私がNBAのファンになって以来、素晴らしいプレイヤーを数多く見てきたが、バスケットボールというゲームの概念すら変えてしまうようなインパクトのあるプレイヤーはカリーが初めてかもしれない。
もちろん、MJは今も神に違いないけれど、彼の場合、(イリーガルディフェンス含め)あの当時のルールそのものがジョーダンのために作られたんじゃないかと思うほど、バスケットボールという、いやNBAという競技に究極的なレベルでフィットしていた。いわば、完璧に近く、現代バスケットボールと呼ばれる競技に求められる資質をことごとく満たしていたともいえる。
その点、カリーは私の目には、より尖(とが)って見える。
ジョーダンが完璧な5角形なら、カリーはドリブルとアウトサイドシュートスキルが測定不可能なレベルでぶち抜けているのだ。
ルールを変えるのは、そのようなぶち抜けた個性を持った存在で、NBAは、いずれはカリーと、それに続く存在たちの圧倒的なシュート力をしっかりと評価し、受け止める受け皿としての役割を担えるよう進化することが求めれる時がくるだろう。
それは、かつて、常識を覆した名シューターたちの活躍が、バスケットボールに3ポイントという革命をもたらしたのと同じように。