ロッククライミングに魅せられた男たちの物語。

これ、作り話ではなくて、全部実話ですよ。
久々に、最後までワクワクしながら見終えることができたドキュメンタリー映画。
実は、観る前は、
この映画が実話をもとにした作り話なのか、ドキュメンタリー映画なのか…という情報すら入れずに見始めたわけなんですが。

寒い夜だから、寒い雪山に挑む男たちの物語でも観てホットになりてえ…。
ただそんなノリで。
『MERU/メルー』ってなんですか?
この映画のタイトルにもなった『MERU/メルー』。
それはインド北部にある高峰につけられた名前。
その中でも舞台となるのは、メルー中央峰(標高約6,250m)です。
その最上部にたちはだかる巨大な岩壁が、サメのヒレのような形をしていることから、クライマーたちのあいだでは、通称「シャークスフィン」と呼ばれてきました。(『MERU/メルー』を見る前に知っておきたい5つのことより一部引用。)
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それは、まさにクライマーの聖域といってもいい場所。
選ばれた者しか挑めない。
日本人のクライマーはじめ、
数多くのクライマーたちが挑戦しては跳ね返されてきたといいます。まさに難攻不落。
そんな中、当時、まだ誰も成し遂げたことのないそのシャークスフィンの攻略に挑む3人の男たちがいた。それが、この映画の主人公たちです。
難攻不落の巨大な岸壁を登り切りたい!
シンプルな野望(夢)を胸に、文字通り命懸けで切り立った岸壁を登っていく。

なんで?
その舞台に挑むために生活のすべてをささげている。

どうして?
「なんで登るかって?ただ、景色が見たいからさ。」

…
そんな、案の定クレイジーな男たちがそこにいるわけですよ。
しかも、ドキュメンタリー。すべてが脚色ナシのリアル。
雪崩に巻き込まれて死にかけようが、事故で植物状態になりかけようが、
ひるむことなく、立ち上がってまた山に挑み続ける。
そんな狂っててカッコいい男たちの背中をずっと見せられているような作品。
ドキュメンタリーだからこそ伝わるもの
もし、これが作り話なら

ハイハイ、どうぞいくらでもご自由に理想を語れよ、製作者さんたち…。
というシラケた気分にもなるんだけど、これは実話ですからね。
そういう余計な雑味なんて一切ありはしない。
むしろ、斜に構えてイチャモンつけようもんなら、
自分のほうがすごくダサく思えて惨めな気分になってしまうから油断ならない。
となると
嫌でも突きつけられるのは、
挑むものを前にして、
「さあ、お前さんはどう生きる??」
という問いかけなのです。
もちろん、今から

よっしゃ、俺もエベレスト目指すぜ!まずは富士登山から!
とか思いやしないけど…寒いし。
ただ、やはり困難な目標に命懸けで挑む男はカッケーな!

ジミーイケメンだな!
とか思うわけですね。
理由なく挑戦できることは幸せなこと
たぶん、彼らの中で山に登る理由って
「登りたいから。」
でしかないんじゃないかな、と思います。
もちろん、動機を言語化しようとすれば、
幼少期を振り返ったり、
仲間との友情の物語をさしはさんだり、
家族との絆を描いたりしながら
本1冊、それこそ映画1本撮ることもできるでしょう。

実際、そうやって出来上がったのがこの映画なんだろうし。
ただ、やっぱり、理由なんて結局、
全部後付けって気がする。
他の人を納得させて引き込むためには、必要なもんだけど、
本人たちの中では、
もうね、切り立った岸壁を見た瞬間

登らなきゃ!だってあの岩山が俺を呼んでんだもん!
って思っただけなんじゃないかっていう(笑)。
そんな狂った衝動と情熱に現在進行形で人生をささげ続けている最高にイカれた(イカした)男たちと、たとえカメラ(画面)越しであっても時間を共有できた‥‥そんな錯覚を抱ける至福…。

とにかく濃ゆい90分間でしたよ。
というわけで、よかったらぜひ。
ではまた。