どうやら2018年の春からFXのレバレッジ規制が現行の25倍から10倍に変更されるらしい。
2010年ごろまでは100倍、200倍なんてレバレッジを提供する業者はザラにあったのに、ここ数年で400倍→50倍→25倍→10倍と
倍々ゲームなんてスピードを超えた速さで規制が進んでいる。
そもそも、事の発端は昨年9月に日経新聞(電子版)に掲載されたこのような記事だ。
日本経済新聞 電子版
2017/9/27 18:45
FX証拠金倍率を引き下げ 10倍程度に、金融庁検討
リスク管理を懸念、最大25倍の規制見直し金融庁は外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率(レバレッジ)を引き下げる検討に入った。現行の最大25倍から10倍程度に下げる案が有力だ。外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていると判断した。国内の取引高は約5千兆円に上る一方、FX業者への規制は銀行などに比べ緩い面がある。規制見直しで日本発の市場混乱を防ぐ。
金融庁はFXの業界団体、金融先物取引業協会と規制見直しに向け協議を始めた。早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する可能性がある。
この時には、まだ検討段階だったのが、今年(2018年)に入り、2月13日には「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」が開催されるなど、いよいよ改正に向けて本格的な動きが出てきたようである。
以下は金融庁ホームページからの引用
「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第1回)議事次第
日時:平成30年2月13日(火)10時30分~12時00分
場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室1.開会、メンバーの紹介
2.事務局説明
3.討議
4.閉会配付資料
資料1
メンバー等名簿
資料2運営要領(案)
資料3事務局説明資料
引用ここまで。
となると、トレーダーにとって気になるのは、
果たして、この規制が自分のトレードにどのように影響してくるのか?ということだろう。
というわけで、今回は、ちょっとだけ今回のレバレッジ規制とそれがトレーダーに与える影響と可能性について考えてみたい。
小額資金でトレードすると利益が上げられなくなる?
トレーダーにとって、利益をあげることは何よりの関心事だ。
しかし、利益を上げるとは、裏を返せば、そのために必ず生じる損失を受け入れるということでもある。
一般的に、(ギャンブルではない)理性的なトレードをするために、1回のトレードでリスクにさらしていい金額は、せいぜい証拠金の1~2パーセントまでと言われている。
これは、証拠金100万円でトレードしていれば1万円~2万円。10万円の場合は、1000円~2000円ということになる。
海外の有名投資家の中には、
「1回のトレードで1%以上リスク取ってるやつはサル🐵!」
と断言する方もいるほどで、それほどリスク管理というのは、FXにおいては、日々変動する相場で生き残るために欠かせないものだったりする。
ていうか、そういう当たり前のリスクの範疇でトレードしてるなら、こんな規制とか別にどうってことねえだろ?とは思うのだが、
それでも、ナケナシの軍資金を頼りに、FXに参入してくるビギナーたちの目には、外国為替証拠金取引というのは、金銀財宝が眠る宝の山のように見えるのだろうか?
まあ、結局まだまだ
”空いた時間を使って楽して稼げる!”
だとか
”10万円を一年で1000万円に!”
みたいなキャッチーな詐欺…まあ、100人に一人くらい運よく行けちゃったりするから、100%詐欺というのでもないだろうけど、そういう甘い言葉に踊らされてしまう人たちにとっては、
ちょうど宝くじの1等が1億円から2000万円に下がってしまったようなイメージで、不満があるのかもしれない。
ただ、覚えておきたいのは、機関投資家と呼ばれる超一流のトレーダーたちでさえ、年間に20~30パーセントのリターンを上げられれば御の字だということ。
日々億単位の資金を動かし、何十年もトレードに携わるビッグプレイヤーたちでさえそうなんだから、初めて間もないひよこトレーダーが
「まあ、まずは月2倍くらいにできればOKかな?まずは、控えめに逝きますb(ただの誤変換だけど、言いえて妙(笑」
とか言ってるのがどれだけ現実味の薄いことかお分かりいだだけるのではないだろうか。
資金効率が下がる?
これも、今回の規制の問題点として言われている。
これは、一面では正しい。仕組み上、そうだとしかいえない。
もし仮に、今レバレッジが25倍から10倍に下がると、
これまで1億円分の取引をするのに400万円あれば足りたのが、1000万円なければ出来ないことになるからだ。
ただ、これはあくまで数額上の話。
2流以下の投資家が、レバレッジ25倍フルに効かせた状態で勝ち続けるなんてことは、ジャンケンで勝率7割を維持し続けるよりもはるかに難易度が高いこと(てか、運ゲー)だと思う。
というか、そのようなギャンブラー的な考え方自体、安定的に利益を上げ続けるという思想には馴染まないものだ。
とりあえず、99パーセントのトレーダーにとって、勝ち続けるために何ら影響のない改正なので、今のところ、それほど心配することはないんじゃないかというのが率直な感想。
ちなみに、海外口座などを使えば、この規制は回避できるみたいだけど、あまりおススメはしない。10倍でもリスク取り過ぎなのにそれ以上取ってどうすんの?って話なので。
またFXには、何年かに一度、年間の資金変動率を一日で上回ってしまうような大変動(まあ、震度8とか9クラスの大地震みたいなもの)が起こる。
そんなときポンド円のようにボラティリティの大きな通貨でポジションを持っていると、仮にレバレッジ10倍でも元本以上の損失が出てしまうから、その意味で、後ほど引用する今回の件に関する金融庁の回答にある『個人投資家保護や金融機関が想定外の損失を被るリスク』を回避するための規制だという主張は意味がないようにも思える。
とはいえ、リスクのないところにリターンが生まれないのも事実で、トレーダーはみなそのようなレアケースは覚悟のうえ(自覚があるかないかは別にして)なのだから、素人(トレーダーではないという意味において)は余計なことをせず、ほっといてくれ!というのもまた、本音と言えば本音だったりする。
でも、そのような事態にしても、きちんとストップを置いて、資金管理していれば大ケガにはつながらないし、やはり必要以上に憂う必要はないと思う。
とにかく、この規制はもうどうやら決まってしまったことみたいなので、あとは、ルールの中でどう立ち回っていくかを考えていくほかない。
「せっかくだから、これきっかけでレバレッジを落としたトレードスタイルに変更してみようかな…」という相談を受けたとしたら、私ならば大賛成する。
問題があるとすれば、金融庁がモゴモゴしてること
2017年9月の規制案発表を受け、FX取引業者大手のマネーパートナーズが金融庁に今回の規制の意図を質問し、それに対し、金融庁から文書で回答を得ている。
以下は、その引用。
平成29年9月28日
本日の一部報道について
本日、日本経済新聞において、FX(外国為替証拠金取引)の証拠金倍率引き下げに関する報道がなされておりますが、金融庁に確認したところ、以下のとおりでありましたのでお伝えいたします。
記
(1) 証拠金倍率の引き下げについては、個人投資家保護や金融機関が想定外の損失を被るリスクなどの観点からさまざまな議論があるのは事実である。
(2)証拠金倍率の引き下げを行う場合は、業者や業界に働き掛けて意見を聞き、手順を踏んで行うものであり、金融庁が一方的に行うということはない。
以上
引用ここまで。
まあ、金融庁が発表した理由なんて、しょせん表向きのモノで、何の意味もないことだからいいとして、というか業界ってなんだよ(笑、具体的に○○業界と言わない辺り、さすが官僚の書いた文章というところか。
私なんかは、どうしても金融庁と聞くと半沢直樹に登場したあの方のイメージが強過ぎて、自分たちだけでは進めないとかいいながら、どうせかなり強引な進め方をしてくるんだろ?とか勝手に思ったりしている。
これに対しては、
一部では、天下り先の取引所取引を優遇して、個人投資家を殺すFX始まって以来の大改悪!
なんて声もあるみたいですけど…まあ、ね。
確かに、そういうゲスい理由で行われた規制だとしたら、大問題だとは思うけれど、10倍規制自体に特に問題があるとは私自身は思わない。
だって、もともと、そんなにリスクの高いトレードしてないもん(笑
いずれにせよ、個人投資家は、決まったら黙って従うしかないことだし、
悪法もまた法なりというか、ルールは誰しも平等というか。
ただ、さすがに証拠金の5パーセント程度のリスクすら許容できないような事態になったら、さすがに私も別の金融商品に移ることを真剣に考えるかもしれない。
遅ればせながら、仮想通貨とか、その辺勉強しといた方がいいかもしれない。
とはいえ、相場の基本的な動きは、扱う商品が変われども人が不安と欲望によって取引をする限り普遍的なものですから、過去検証出来るデータさえ手に入れば、あとは、まあ何とでもなるかなとは思う。
とりま、まだトレードのいろはのいまでも行きついていないトレーダ―見習い兼ギャンブラーの方々は、これを機会にトレードとギャンブルの違いについて、真剣に考えてみてはいかがでしょうかね。
「10倍規制とか…マジか…こんなんFXやるうま味ないじゃん…」
とか言ってる人は、まず間違いなく稼げない世界なので、退出して正解。
ただ、先行きどうなるかわからん不安定な業界ではあるので、今後の動向に注目しつつ、新しい金融商品にも今のうちから注目しといた方がいいのかもしれない。
それでは、また。