深夜とおじやと風邪気味ごっこ





深夜に、暗い台所でひとりおじやをつくる。

(そういえば、今日は食事らしい食事をしていなかったな…)

そんなことをぼんやりと考えながら、残っていた味噌汁の中に冷えた白米を入れる。

そして、そこに豆乳も少々加える。

作ってから大分時間がたった味噌汁は、ちょっとしょっぱくなっているから、こうすることで、味がまろやかになり、またコクも出てくる。

文字に起こしてみて初めて、普段何気なく使っている「コク」という言葉に当てはまる漢字が何なのか、そもそもコクがあるって正確にはどんな意味なのか、よく分かっていなかったことに気が付く。

まあ、今は、面倒なので敢えて調べやしないけど。

ここで一度味見。うん、何となく物足りない。
(そういえば、鍋のスープにゴマ豆乳鍋の素ってあったよなあ…あれ結構美味かったっけ)
ふと、そんなことを思い出し、急遽ゴマ油も加えてみることに。

よし、これだ。

味がまとまった所で、器に盛りつけ、麦茶を脇に置いて、ゆっくりと食べ始める。

こうして深夜に起きだして、温かいおじやを頬張っていると、何だか体がフワフワしてきて、自分は今、風邪気味で、さっきまで大分熱があって、でも汗をかいて大分熱が下がってきたら急にお腹がすいてきて、今ここに座っている。
そんな気がしてくる。

風邪の時は、いつもより周りも少しだけ優しくなるし、それは自分も含めてのことなので、あまりムリなこともしなくなるから、どこかいつもより世界がゆっくりと穏やかなものに感じられる。

子供の頃の
束の間の、幸福な時間。

そういえば、ここ何年も風邪らしい風邪、ひいていなかったんだな。
だから、こんな気分を味わうのも数年ぶりという事になる。

「ごちそうさまでした。」

誰もいないテーブルの上で静かにスプーンを置いた。
風邪気味ごっこ。

たまにこうして、ひとりスローな時間の中に揺蕩うのも
これはこれで悪くない。


妄想
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