【NBA】カリーが告げる新時代の到来

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最近私の中で3ポイントシューターへの認識が大きく変わった。
そのきっかけとなったのは、カリートンプソンの二人からなるデュオ“スプラッシュブラザーズ”の登場である。

 

特に兄(?)であるカリーは、NBAのシーズン3ポイント記録を更新し続け、その異常と思えるシュート力で“ヒューマンチートコード”と呼ばれるほどだ。ゲームでもあれほど入らないのでは…。

トンプソンも先日行われたオリンピックにアメリカ代表として出場し、正確なシュートで金メダル獲得にしっかりと貢献している。

スリーポイントラインの遥か後方からでも軽々とシュートを決める彼らの登場によって、近いうちにNBAで4ポイントショットが導入されるのではないかという噂まで持ち上がるほどである。

シューターは本来繊細な職業

ロングシュートは、遠くから射貫く正確なコントロールを要するため、どちらかというと、ゴールに直接叩き込むダンクシュートのようなアンストッパブルなプレイではないと考えていた。

 

そのため、良いディフェンダーがフェイスガードのようなタイトなマッチアップの方法をとれば、いかにいいシューターといえども沈黙してしまうと。

そのような前提を踏まえて上で、スクリーナーはシューターをオープンにするためにスクリーンをかけに行くし、ディフェンスはスクリーンにかからないよう声を掛け合い、絶えず気を張っている。また、見ている方もその駆け引きを楽しんでいたのだ。

そして、レジ―ミラーレイ・アレンなどの歴代のクラッチシューターたちは皆スクリーンの使い方がうまかった。つまり、いかに優秀なシューターと言えども、活躍するためには、チームメイトのお膳立ては欠かせなかったのである。

だが、特に、カリーの3ポイントは異質である。

通常、アウトサイドシュートのような正確さを求められるプレイは、いかにディフェンスとの距離をとるかがプレイのカギとなる。密着された状態では安定したフォームとリズムでシュートを打てないからだ。

そのため、シューターはディフェンスにタイトにつかれるとシュートを打つことをためらう場合がほとんどで、再度パスをまわしてチャンスをうかがうのが一般的だ。

しかし、カリーの場合、ディフェンスが付いていてもお構いなし。

その上から楽々とシュートを沈めてしまう。大げさではなく、ディフェンスがスクリーンに気を取られて一瞬目を離した隙に決められてしまうのだ。

それを可能にしているのがシュートを打つまでにわずか0.4秒というNBA史上でも類を見ないようなクイックリリース。彼の登場でそれまでマイナーな存在だったワンモーションのシュートが脚光を浴び始めている。

スリーを打つと分かってディフェンスしていても止められない…。
これはディフェンダーにとってまさに悪夢である。

これまで、ディフェンスはスリーポイントラインの外側ではある程度距離を離してつくのがセオリーと考えられてきた。スリーポイントの外側はいわば手を抜いても許されるゾーンだったのである。そしてその分、ラインの内側では激しい攻防が繰り広げられてきたのだ。

しかし、ハーフコート付近からでもシュートを決めてしまうカリーらの存在は、ディフェンスのあり方に大きく影響を及ぼすだろうといわれている。

フロントコートに入ったら、もはやタイトにつかなければならないというディフェンスにとってはなかなか辛い時代がやってくるかもしれない。

派手なダンクがリーグを席巻した時代

NBAのプレイの花形といえば、言わずと知れたダンクシュートである。
まさに、選ばれしものにだけ許されたボールをリングの上から叩き込む豪快なプレイは、観客を一瞬で虜にする。

そのため、時代をつくったトッププレイヤーたちは、例外なくみな派手なダンクを武器にしていた。


その代表は、NBAの歴史で最も偉大な選手ともいわる、いわずとしれた”神”マイケル・ジョーダンである。

“エア”と称される滞空時間の長い跳躍から繰り出される芸術的なダンクシュートの数々は現在でも語り草となっている。

ドクターJから始まったダンカ―の系譜は、ジョーダンによってひとつの到達点をみたように思う。

そして、コービーやビンス・カーター、あるいはレブロンなどその系譜を継ぎリーグを支配するタイプの選手たちは、皆2メートルの長身と恵まれた身体能力を兼ね備え、時にジョーダンを彷彿とさせるような、あるいはディフェンスを吹き飛ばす重戦車のような破壊力抜群のダンクでファンを魅了し続けてきた。

カリーの登場はバスケットボール新時代の予兆なのか

カリーらの登場でその流れが変わりつつある。


これまで、スリーポイントシューターというと、レジ―ミラーのようにスクリーンを巧みに使ってシュートチャンスをつくるか、サイドで待ち受けてシュートを放つスポットアップタイプの選手がほとんどで、平均で30点に迫る得点力を持つプレイヤーは存在しなかった。

しかし、カリーはシューターでありながら、平均得点で30点を上回る活躍をみせ、2015-16シーズンには得点王に輝いている。

殆どダンクシュートをしないプレイヤーが得点王に輝いたのは…はっきりいって記憶にない(笑

それぐらいNBAの歴史でも革命的な出来事なのだ。
カリーの場合、シュートだけでなく、ディフェンスを自在にかわす変幻自在のドリブルを併せ持つ。

その実力はAIことアレンアイバーソン氏も認めるほどで、

あいつのドリブルは現役ん時の俺よりもヤバいね。」と太鼓判を押すほど。
ここまでシュート力とボールハンドリング能力を高いレベルであわせ持つプレイヤーはNBA史上でも類をみない。まさに”新人類”という言葉がピッタリである。

NBAは”空の時代”から”宇宙時代”へ

ドクターJから始まり、”神”と呼ばれたジョーダンと、コービーやレブロンらその後継者たちがNBAを支配した時代が続いてきた。それは、派手なダンクが飛び交う、いわば”空の時代”とでも言おうか。

カリーの登場で、空の時代とポストMJ論争にも終止符が打たれるのかもしれない。
とすると、これからは…宇宙人なみのシュート力を競い合う宇宙時代…の到来…ということになるのか(笑?

 

宇宙時代といえば、かつてMJが主役をつとめたスペースジャムという映画があった。

宇宙人とジョーダンがバスケットで競うというその内容も今となっては一つの予言のようで興味深い。