空腹を習慣化することで人生が変わる3つの理由

健康


“空腹”と聞いて、いったいどのようなことをイメージするだろうか。

お腹がすくと、頭がまわらない。力が出ない。仕事や勉強に支障がでる。
そんなネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるだろう。

その一方で、最近では空腹状態がもたらすポジティブな効果が注目され始めている。
では、空腹になると具体的にどんな”いいこと”が待っているのだろうか。

今回は、そんな空腹がもたらすメリットについて“空腹で人生が変わる3つの理由”と題してご紹介させていただきたい。

理由1:”空腹”で仕事や勉強の効率がアップする

人は、標準的な食事1回分を消化するために、フルマラソンを走りきるのに相当するエネルギー量(約1,600キロカロリー)を消費するのだそうだ。

食事のあと、何となくダルさを感じたり、眠くなったりするのは気のせいではなく、私たちは食べ物を消化することで文字通り”疲れてしまっていた”のである。

反対に、食事の回数を1回減らせば、消化に要するエネルギーが浮くことになる。
その分を仕事や勉強など、有意義な活動に使うことができるようになるのだ。

また、食事の量を減らすことで、食べ物の消化による体への負担が減ると、自然と睡眠時間も短くなるという。その時間もまた、自分の時間として使うことが出来るようになるという嬉しいオマケつきだ。

理由2:空腹は若返りに効果がある

サーチュイン遺伝子というものをご存じだろうか。

この遺伝子は、別名“長寿遺伝子”とも呼ばれ、一時期メディアでも「サーチュイン遺伝子」を活性化することで、マウスが約15%長生きするという実験で注目を集めた。

事の発端は、1999年にさかのぼる。
もともとは酵母から発見されたこの遺伝子は、活性化すると、ショウジョウバエの寿命を30%、線虫の寿命は50%も延ばすことが判明した。

その後、イスラエルのバール・イラン大学研究チームが2012年に科学雑誌「ネイチャー」の電子版で発表した研究結果で「サーチュイン遺伝子」を活性化することで、マウスが約15%長生きするという結果が公表されたのだ。

さらに、サーチュイン遺伝子は、老化の原因とされる活性酸素の抑制、ウイルスを撃退する免疫抗体の活性化、さらに全身の細胞の遺伝子を修復するなど、さまざまな老化防止機能をもつとされる。このことから別名“若返り遺伝子”とも呼ばれている。

そして、このサーチュイン遺伝子を活性化する確実な方法がひとつだけ判明している。
それはズバリ“空腹”になることだ。

金沢医科大学の古家大祐教授は次のように話す。

「飢餓状態になると、サーチュインが活性化されることが判明しています。サーチュインが指令を出して、ミトコンドリアやタンパクの凝縮したものなど、細胞内にある老廃物を排除するオートファジーという機構が働き、細胞が若々しくなるのです」

サーチュイン遺伝子は、空腹の状態、つまり摂取カロリーが減ることで活性化する。これは動物の持つの防衛機能の一種と考えられ、食料が減って栄養が足りなくなると、細胞レベルの損傷を防ぐために修復機能が活性化するというわけである。

米ウィスコンシン大学では、アカゲザル約80頭を使って20年にわたりカロリー摂取制限の実験を行なってきた。その結果、食事を通常通り与えられたサルは体毛が抜け、顔などにシワが目立つのに対して、30%のカロリー制限を受けてきたサルは、体毛はフサフサで肌にも張りとツヤがあり、若々しさに溢れていたという。

サルは全頭が27歳以上で老齢期にあったが、カロリー制限なしの群38頭のうち、実験中に死亡したのは14頭、カロリー制限ありの群38頭のうち死亡は5頭で、制限ありのほうが“長生き”であることもわかった(2009年発表時)。しかも、カロリー制限ありのサル群では、がんや糖尿病、心臓病、脳萎縮などの疾病が少なかった。

少なくともサルに関しては、空腹でいることが老化防止や若返りの効果をもつ可能性が高いことが実験で確認されているのである。これは人間に対する効果だって期待せずにはいられない。

理由3:”空腹”にはガンの抑制に効果がある

日本人の死因トップにもあげられるガン。

いまだ人類が克服できないこの難病の主”ガン細胞”にとっても、”食べない”ことは脅威なようである。

ガン細胞にも、増殖のための栄養が必要だ。そして、その栄養がどこから供給されるかといえば、糖質などを中心に、当然、宿主となる人間が、普段食べている食事からということになる。

お分かりだろうか。

これは、裏を返せば、食事をセーブすることで、ガン細胞への栄養供給をストップすることができるということを示唆している。いわゆるがん細胞に対する”兵糧攻め”である。

一説によると、ガン細胞は正常な細胞の5倍から20倍ものブドウ糖が必要だといわれている。
空腹を維持することにより、食事から摂取されるブドウ糖の量が減ると、ガン細胞の成長も阻害されることになる。つまり、その分ガンの進行を遅らせることが期待できるのだ。

実際、医学界でも、ガン治療に断食を取り入れて効果を上げている例も報告され始めている。
抗ガン剤のような副作用もない”食べない”ガン治療は、今後ガン克服の救世主となるかもしれない。

おわりに

いかがだっただろうか。

およそ3,800年前に刻まれたエジプトのピラミッドの刻印に

「人々は食べた物の1/4の栄養で生きられる。
残りの3/4は医者のために食べているのだ」

という言葉が刻まれているという。

いわずもがな、これは必要以上のものを食べれば病気になり、結果、医者にかかることになるという意味であり、人類は、どうやら遥か昔から食べ過ぎの弊害を理解していたようだ。
一般的には、空腹というとまるで車のガス欠のような”ピンチ”だと捉えられがちである。

お腹がなる=食事が必要なサインと考える方も多いことだろう。

一方で、また別の可能性にも目を向けてみてはいかがだろうか。

空腹でお腹が鳴るのは、サーチュイン遺伝子などの若返り遺伝子が活発に活動を開始したサインだと考えてみるのだ。不食で有名な山田鷹夫氏は、食べないことの気持ちよさをランナーズハイになぞらえて不食ハイと命名している。

食べないことは気持ちがいい。

一度、そんな風に感じると、ランナーがマラソンにハマるように、空腹な時間も自然と習慣化していくことだろう。

ただし、あくまで無理は禁物。
食べないことがストレスになるようではかえって逆効果だ。

どうしても食べたいときは食べたいものを食べ、まずは、何となく惰性や暇つぶしで食べることをやめてみる。それだけでも、十分空腹な時間を作ることの効果を実感していただけるはずである。

それでは、また次回。