先日、本屋で一冊の絵本が目に留まった。
ある犬のおはなし –
悲し気にこちらを見つめる一匹の犬。
それは殺処分について描かれた絵本だった。
犬たちが殺処分される描写を見て、
かつて、ドイツで数百万人のユダヤ人がガス室送りにされたことが思い出された。
それは、人類が犯した最も大きな過ちのひとつ。
もう二度と繰り返してはならないこと。
それと同じことを、私たちは今も犬たちに対して繰り返し行っている。
その事実と罪の大きさに思わず愕然とした。
どんなにひどい扱いを受けても、
飼い主を信じ、
恨むことも無く
最後まで待ち続ける犬の姿に、涙なしでは読み進むことができない。
しかし、この本を読んだ者の一人としては、ただ泣いて終わるわけにはいかない。
これは、感動的な作り話とは違う。今、目の前で起こっている現実の話なのだから。
◇日本における犬の殺処分の実態
日本では、年間およそ14万頭もの犬や猫が殺処分されている。
「飽きてしまった」、「年を取って可愛くなくなった」、「病気になった」、「世話が面倒になった」、「今度引っ越すマンションがペット禁止なんで」…
そんな無責任で身勝手な理由から、飼い主や業者が保健所や動物管理センターに持ち込むケースが後を絶たない。
また、飼い犬に何度も子犬を産ませては繰り返し持ち込んだり、動物取扱業者や個人ブリーダーなどが売れ残った犬を持ち込んだりといったケースも多くあるという。
この写真の犬たちも収容6日後には殺処分された
また、自治体の中には、決められた日時・場所に、トラックで犬猫を回収して保健所や動物管理センターに搬送する「定時定点収集」というごみの収集とまったく同じシステムを採用しているところもあるという。
飼い主が犬や猫を手放すことを助長するとして、この定時定点収集を廃止する自治体も出てきているが、依然として続けている自治体も少なくない。
あなたなら、この現状をどう考えるだろうか?
◇犬はモノじゃない
当たり前だが、犬は生き物だ。
でも、その当たり前を忘れている人があまりにも多すぎる。
にもかかわらず、数万円から数十万円のお金を払えば、誰でも簡単に犬を飼うことができてしまうという現状に問題はないのだろうか。
例えば、人間の場合、養子縁組をする際には、里親となる人物の適性を時間をかけてチェックするが、犬の飼い主となる場合も、これに類するようなチェックが必要なのではないか。
また、犬が家族の一員としてこれだけ認知されるているのだから、犬を遺棄したり途中で無責任に手放すことに対しては、もっと法的な罰則を強めてもよいのではないだろうか。
例えば、保護責任者遺棄罪などの量刑を参考に、
少なくとも、簡単に手放すことを思いとどまらせる抑止力として機能するレベルの罰則は設けて然るべきだろう。本当は、こんな無粋なことはあまり言いたくはないんだけれど…。
◇おわりに
犬は、飼い主を一生の友にするという。
彼らは、生涯、飼い主を裏切ることなく、どんな時も信じて待ち続ける。
そんな犬たちを、人間の身勝手な事情だけで手放すことがどれほど残酷なことか…
絵本からは、殺処分ゼロを心から願う優しくも力強いメッセージがひしひしと伝わってくる。
これから犬を飼おうと思っている人、今、犬と一緒に暮らしている人、犬は飼ってないけど大好きな人。
犬を愛するすべての人に、ぜひ手に取っていただきたい一冊。